◆真昼の月◆

ヘルパーのお仕事、職人仕込みのレシピなどを綴ります。

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緑内障で徐々に視力を失ったS藤さんは、現在、完全に見えなくなった。
もう光も闇も見えない。
肌に感じる太陽の熱で、昼間なのか夜なのかを知る。
肌に感じる風で、湿気や天気を知る。

「夢を見るんだよね」
穏やかにコーヒーを飲みながらS藤さんが言う。
「田舎に行く夢なんだ。家族と一緒に」
列車に乗って田舎に行く途中、息子さんははしゃぎ、奥さんはにこやかに笑っている。
空は青く、水田には黄金の稲穂が揺れる。

「幸せな気持ちで目が覚めると、真っ暗なんだ」

その絶望は、どんなだろう。

夢の中ではカラーの世界が広がり、親しく懐かしい人の顔がはっきりと見えているのに、目覚めると暗闇――。


「僕はわかっているんだ。これが夢だって。だから目覚めるのがイヤなんだ」

けれども朝はやってくる。
そうして、真っ暗なS藤さんの1日が始まる。















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