◆真昼の月◆

ヘルパーのお仕事、職人仕込みのレシピなどを綴ります。

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某イベントで、何十年ぶりのN氏を見た。
パワフルで、いつも自信にあふれていた過去のN氏とは比べようもないくらい年老いて衰えた姿に、愕然となった。

1934年生まれ。御歳75歳だが、それにしても、あまりにも老けて見える。
舞台の袖から、よろよろと出てきて、マイクを持つ姿も、背は曲がり、活舌もはっきりしない。
「変だ」と思う。
歩き方も姿勢も、話し方も仕草も。
左手はズボンのポケットに入ったままなので、「軽い麻痺があるのかも」と思う。
けれどもその後、左手を出してスクリーンを指し示したのを見ると、麻痺ではないらしい。

「変だ」
やっぱり気になる。
左手はいつも所在無く動き、私には何か掴まる物を探しているように思えるのだ。
普段は杖を常用しているのかもしれない。
この舞台に出るのに、彼のプライドが杖を拒否したのだろうか。

二度目に彼が登場した時、さっき立った位置までさえ歩けなかった。
舞台の、袖とはいえないくらい端っこで挨拶をしたのだが、ステージ向かって左の人たちには、端過ぎて彼の姿は見えなかっただろう。
きっとどこか痛いのだ。強いプライドがあっても、歩けないくらい痛いに違いない。
そしてきっと、痛い部分は身体の左側、支えを必要としている側なのだろうと推測する。

司会が言う。
「さっきまで車椅子だったんです。骨折しておられるとか――」
司会者にN氏は答える。
「帰宅してベッド脇で転んだんです。ベッドの枠にぶつけて、左の肋骨3本折れてます」

は!?

そりゃあ痛いだろうと思うと同時に、ものすごく腹が立つ。

なぜこの人を、介添えもなく舞台に立たせたのか。と。
本人の強い希望だとしても、もしここで再び転んだら、他にも骨折する可能性だってある。
そんなことになったら、この人はきっと寝たきりになってしまうだろう。

手を繋げとは言わないが、もしもの時に支えてあげられるスタッフを、せめて隣に置くべきだ。
どうしても1人で出たいと彼が言ったとしても、
彼が崩れて、床にぶつかるまでの間に、彼の体勢を立て直せる位置に、プロの介護者を配備するべきだろう。

とりあえず、彼はよぼよぼと舞台を去って行った。
車椅子に戻って、喘いでいるかもしれない、と思う。

だいたい歳をとると、性格が頑なになって、人の意見など聴かない人が多い。
頑固爺に頭を悩ますことはしょっちゅうだ。
だが、彼にはまだやりたいことがある。
常に野望を持ち続け、意欲ある人なのだ。
だったらなお、自分の身体は自分で厭わなければ、誰にもわかってもらえまい。

御身大切に。

心からそう思って、イベント会場を後にした。














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