◆真昼の月◆

ヘルパーのお仕事、職人仕込みのレシピなどを綴ります。

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ゴールデンウィークに訪問したとき、T中さんは骨折して寝たきりだった。
長く一人暮らしをしていたのだが、さすがにそれは無理となり、一日3回、毎日ヘルパーが訪問して調理、食事介助、清拭、おむつ交換を行っていた。

96歳で在宅。
子どもたちは(といっても70近い方ばかりなんだけど)みな、このままベッドに寝付いて、さほど遠からず彼女の人生は終わるのだろうと感じていた。

「電化製品なんか無い時代だったからねぇ。5人の子どもたちの洗濯と食事の用意と繕いもので1日は終わっちゃったわよ。だからずっと専業主婦で、働いたことはないの」
かいがいしく子どもを育て、ご主人が亡くなってからは、ひとりで何でもやってきた。
「こんなに人さまのお世話になるなんて思わなかったわ」
話し声には活気があり、とてもそのお歳には思えない。

T中さんの長男は、自転車で20分ほど離れた所に住んでいる。
ちょうど5月に勤めを辞めて時間が出来たからと、足しげく母親の元に通っていた。
家事には不慣れながら買い出しに行き、掃除をした。
お嫁さんには「いずれ頼むことがあるかもしれないけれど、今は時間もあることだし、俺が介護するから、まだ大丈夫」と手伝わせなかったという。
そして、長男は母のおむつを替えた。

「まさか息子に下の世話をさせるなんて、とんでもないって言ったんだよ。
ヘルパーさんが来てくれるんだから、下の世話はしていらないって」
だが長男は「おむつが汚れているとわかっているのに、ヘルパーさんが来るまでそのままにしておくなんてできない」
と、おむつを替えてくれたのだそうだ。

「私がこのまま寝たきりになってしまったら、私が死ぬまで長男は私のおむつを替えるでしょう。だから、寝たきりでいるわけにはいかなかったのよ」

3か月ぶりでお盆に訪問したとき、T中さんは庭を歩けるくらいになっていた。
自宅でシャワー介助を受け、ヘルパーと一緒に掃除をし、調理をし、にこにこと話をする。
その回復ぶりには目をみはる思いだ。

「死ぬまで、自分のことは自分でやらなくちゃ。それが当り前でしょ?」

T中さんの表情は明るく、まぶしかった。














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