◆真昼の月◆

ヘルパーのお仕事、職人仕込みのレシピなどを綴ります。

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○間さんの奥さまが亡くなられた。
しばらく不自由な視力で独り暮らしをしていた○間さんだが、熱い味噌汁をお椀に注ごうとしてこぼしてしまい、足にやけどを負ったこともあって、離れて住んでいる娘さんたちは○間さんを介護付きマンションへ入居させることに決めた。
もともとの住宅も、道路拡張のために立ち退きを迫られており、その立退き料で入居するのだという。
(○間さんの記事は、右メニュー・ブログ内検索で「○間」と入力すると全部読めます)

「かずよんさんに通院介助してもらうのも、今日が最後だね」
病院の待合室で○間さんはしみじみと言う。
意思疎通困難なんて言われていた○間さんは、ずいぶん明るく、よく話す人になった。
入居するとマンション内に常在するヘルパーが通院介助してくれるのだそうだが、この病院は担当範囲より遠いので、事情を説明して今日は紹介状をもらって近くの病院への転院手続きをするために娘さんもいらっしゃるという。

「最初お会いした時は無愛想で、うまくコミュニケーションがとれるかどうか不安だったんですよ」と言うと、「えー? そうだったかなぁ」と、笑う。
あれこれ懐かしいお話をしていると、娘さんがいらした。
会うなり目を瞠り「父がこんなに明るく笑う姿を何年ぶりで見ました」と言われる。
視力を失ってからはいつも無口で暗い目をしていた。だから会うのが辛かったのだ、と。
初めてお会いした娘さんに、私が知っている奥さまの話をし、最近の○間さんの状態をお教えした。
「本当にありがとうございました。私は今日も紹介状をいただいたら父を残して帰らなければならないので、どうぞ家まで送り届けてください」
丁寧にお辞儀をされて、何度も振り返りながら娘さんは帰って行った。

いつもの通院介助と同じように電車に乗り、いつも通り最寄りの駅に着き、
いつも通りタクシーを拾って自宅までお送りする。
ご自宅へ上がらせていただいて記録を書いていると、○間さんが正座して改まった口調で「かずよんさん」と言った。
「はい?」
正座したまま、にじり寄って来て、私の両手を包み込むと
「今日まで本当にありがとう」と、頭を下げる。
僕の晩年において、あなたとの出会いは本当に幸せで有り難かった。
話すことも笑うことも、出かける楽しさも思い出させてくれた。
本当に、本当にありがとう――

震えながら涙ぐみながらそう言われて、思わず貰い泣きしそうになる。
「こちらこそ、ありがとうございました。○間さんと一緒の時間は私も楽しかったです」
新しい環境でも、いいお話し相手ができるといいですね。
気の合う仲間ができるといいですね。
どうかお元気でお過ごしください。

別れを惜しみながら○間さんのお宅を辞した。
それにしても、若い頃はプレイボーイだっただろう○間さん。
別れの言葉も素敵でしょ?
きっと新しいマンションにもうまく馴染めるだろうと思っています。

さようなら。○間さん。
ありがとうございました。














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