◆真昼の月◆

ヘルパーのお仕事、職人仕込みのレシピなどを綴ります。

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重度の弱視の○間さんは、30センチほどに近づくとぼんやり人影が見える程度だという。
通院介助するときには、○間さんが私を見つけやすいように、なるべく赤い服を着て付き添うことにしている。

通院の楽しみは、薬が用意されるまで待つ間の食事だ。
病院の裏にオフィスビルがあり、その中のレストラン街にバイキング料理の店がある。
ランチタイムだと、食べ放題、時間制限なしで980円。
味も悪くなく、メニューは豊富だし、この界隈ではとてもお得なランチだと思う。

今日もそのレストランへいそいそと向かう。
半ば常連となっているので、お店の人も座りやすい場所を用意してくださる。
(白杖を使うので、あまり狭い場所を通り抜けるのは難しい)
席に着き、荷物を置くとさっそく「じゃあ、取りに行きましょう」と嬉しそうな○間さん。
お料理は丸い大きなテーブルにぐるりと並べられている。
そのテーブルの周囲の壁に沿って、飲み物コーナーとサラダコーナー、
スープとライスのコーナーがある。
まずはなんといってもおかず類。
見えない○間さんのために、全部説明が必要だ。
「煮込みハンバーグです」「ポテトのグラタンです」「五穀米のカレーです」と、そんな感じ。
○間さんは、自分でお皿に取りたがる。
「だって、バイキングの楽しみは、好きなものを好きなだけ取れることだろう?」
○間さんは、テーブルの縁に左手を添えてぐるりと回りながら、右手でトングを持ち、料理を取っていく。
私はすかさずお皿を差し出して料理を受け取る。

けれども見えていないので、料理はお皿の上にどんどん重なってゆくのだ。
シューマイの上にひじきご飯が乗り、その上にから揚げが乗る。
桜海老のパスタも、ポテトグラタンも、ピラミッドのように重なる。
ビーフシチューや白身魚のクリーム煮、カレーまで混ぜ混ぜになる。
「違うお皿を用意しますから、いったんここまでにしましょう」といっても聞き入れてくれない。
「いいよ、いいよ。このままでいい。こぼれないだろう?」
こぼれないけれど、カレーの上にはがんもどきの煮物が泳いでいる。
これを食べたら、どんな味になるのだろうか。

おかず類を全種類取り終わると、ようやく○間さんは満足して、サラダバーに移る。
ここでも同じように、ワカメの上にごぼうサラダが乗り、トマトもコーンもピラミッドになる。

これを食べる時がまた物凄い。
お箸では食べにくいので(麺類を食べる時はちゃんとお箸です)
スプーンで掻き込むように食べて行く。
ひじきご飯とクリーム煮と、その他のものも一緒に、○間さんの胃袋に納まってゆくのだ。
正直な話、食べる姿は美しくない。
こぼすことも多いし、全部の料理がかき混ぜられた状態を想像してもらえれば分かると思う。

けれども、食べている時の○間さんの嬉しそうな顔。
幸せいっぱいという微笑を満面にたたえて、パクパクとスプーンを口へ運ぶ。
「そんなに混ざってしまって、それぞれの味はわかるんですか?」
と訊いてみると、
「カレーなんかの強い味はわかるよ。でもね、混ざっても、美味しいものが混ざるんだから、美味しいんだよ」と笑った。
この笑顔にはかなわない。
私は近来、こんなに美味しそうに食べる人を見たことがない。

「それ、ブロッコリーですよ」とか「鶏肉ですよ」と教えながら、自分も食事をすませる。
お勘定を払う時、「今日も美味しかったよ。ご馳走様」と大きな声で言う○間さんに、お店の人も悪い印象を持つはずがない。

「今度来るのが楽しみだなぁ」
帰る電車の中で、もう次の通院を楽しみにしている○間さんである。














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バイキング
バイキング# バイキングはフジテレビジョン|フジテレビ系で不定期にカスペ!などで放送されているテレビ番組のこと。「バイキング VIKING」を参照。# ヴァイキングは本項で説明。-----ヴァイキング(Viking)は8世紀から300年以上に渡って西ヨーロッパ沿海

2007.06.09 06:03 | みゆうの日記

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