◆真昼の月◆

ヘルパーのお仕事、職人仕込みのレシピなどを綴ります。

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独居で身寄りのないA藤さんは、認知症が進んで、自分で金銭管理ができなくなっている。
お財布もどこへ片付けたのか忘れてしまうので、通帳はA藤さんちのケアマネとヘルパーだけが知っているとある・・・場所に保管し、現在役所へ財産代理管理の申し立てを申請している。

身寄りがないので、お金が頼り。
大事すぎていつも財布をどこかへ片付け、毎日のようにパニックになって探している。
今日も訪問したら大騒ぎで探し回っていた。
一緒に探して仏壇の引き出しに入っているのを発見したが、こういう場合「ありましたよ」とは絶対に言わない。
「あんたが盗ったんじゃないの」「隠していたんでしょ」という誤解を防ぐために、さり気なくスルーして
「私は台所を探してきます。A藤さん、仏壇のあたりはもう探したんですか?」と振るのだ。
A藤さんは被害妄想を持たないので「誰かが盗った」と騒ぐことはないが、一応リスクを避けるためにいつもご自分で発見していただくことにしている。自分で見つけるのが一番安心できるだろう。

やっと財布を見つけて安心するA藤さんを横目で見ながら調理をしていると電話がかかってきた。
「ええ。私が本人です。私、銀行口座は持っていません。郵便局だけです」
駅前の○○郵便局です。
え? 最近いつ行ったかですって? いつだったかしら。
残高? 通帳のある場所?
待って、待ってください。困ったわ。思い出せない――

「あまり個人情報を話してはダメですよ。誰からのお電話なのですか?」
声を掛けたが、A藤さんはすでにパニックになっている。
どうしよう。こんな大事なことが思い出せない。
私のお金はいくらあるのかしら。通帳はどこだろう。
ああもう、生活できないかもしれない。
私にしがみつき、涙を落としながら訴えてくる。

「私が代わりにお電話に出ていいですか」と訊くと
「私は何も答えられないわ。お願いだから出て」とおっしゃった。

「もしもし。私はこのお宅を訪問介護しているヘルパーですが、どちらさまですか」
私の質問に電話の声は明るく
「あ、○○事業所のヘルパーさんですね。私は社協の××と申します」
あなたの事業所のケアマネから財産代理管理申し立てを受けたので、A藤さんの認知症がどの程度で、本当なのかかどうか電話で確認させていただきました。
やはり独り暮らしでこのまま財産を管理できそうもない状態だということは電話でも十分わかりましたから、これから書類を作成して対応させていただきます。
若そうな声の男性は、最後まで嬉しそうにそう言って電話を切った。

残されたA藤さんは、どうしよう、どうしよう。と私の腕の中で泣いている。
退室まであと10分ほど。
こんな状態のA藤さんをおいて帰れない。
「じゃあケアマネが通帳を持っていないか、電話で確認してみますね」
と嘘を言って、事業所へ大雑把な説明をして応援を頼む。
10分ほどで主任が到着し、リビングへ入る前にとある・・・場所から通帳を出し、
「A藤さん、契約のためにお預かりしていた通帳をお持ちしましたよ」と言ってくれた。

「え? あなたが持っていてくれたの?」
ようやく泣き顔をおさめてA藤さんは顔を上げた。
なだめ役を主任に任せて、私は次のお宅へ訪問するために退室することができた。

しかし――
納得できない。
ヘルパーがいたから対応できた。
もし1人の時にパニックになったら、A藤さんはどうしていただろう。
認知症の高齢者の不安定な状態を分かっているとは思えない電話の内容に、不信感だけが募る。

これが『お役所仕事』ってヤツか。














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